リバースチャージ - なぜそんなに理解し難いのか

難解なるリバースチャージ

今日は、リバースチャージについて語ります。
この話題を選んだ理由は、経理実務を行っていて、
情報はウェブでたくさん見つけることができるものの、多くの人にとって正確な理解が難しいと感じたからです。

リバースチャージの理解が難しい理由は、3つの異なる事象が絡み合っているからです。

それらを理解するために、まずは以下の3つの点を把握しましょう。

  1. リバースチャージは何の不平等を解消しようとしているのか
  2. 経過措置とは何か
  3. インボイス制度の影響

リバースチャージは何の不平等を解消しようとしているのか

まず、リバースチャージは何の不平等を解消しようとしているのかについて説明します。

リバースチャージは、簡単に言えば、日本国内のサービス提供企業を保護するための制度です。

具体的には、

「消費税を払わなくてよかった海外企業が提供するサービスに対して、国内でそのサービスを利用する事業者は消費税を払うことにした」
という制度です。

これは、国内企業が海外企業に比べて消費税分のコスト競争力を失うことを防ぐためです。
・・・まあそんな制度があっても、国内企業がGAFAに勝てるわけがないのですが、それは別の話。

通常ケース

こちらは国内事業者通同士の取引です。
サービス提供側であるsansan様は、
顧客から消費税を預かり、
国庫に納税します。

リバースチャージのケース

こちらがリバースチャージのケースです。
Facebookが提供した
広告配信のサービスは、Facebookではなく、
国内の広告出稿主(受益者)が納税します。
この点が逆(リバース)なのです。

各種情報よりぽ〜さん作成

経過措置とはなにか

次に、経過措置とは何かについて説明します。

経過措置は、海外の企業が「急にそんな制度が導入されても困る」と感じることを防ぐための措置です。
具体的には、「課税売上割合が95%以上の企業」や「簡易課税制度が適用される企業」は、
特定の条件下で消費税納税の義務が免除されます。

1. 課税売上割合が95%以上(多くの企業が該当)
2. 簡易課税制度が適用される事業者(多くの中小企業)

米国から日本政府に圧力でもかかったのでしょうかね?

リバースチャージ方式に関する経過措置

「事業者向け電気通信利用役務の提供」等の特定課税仕入れを行った国内事業者は、当該特定課税仕入れについて、申告・納税の義務が課されるとともに、仕入税額控除の対象とすることができますが、一般課税で申告を行う事業者のうち、当該課税期間における課税売上割合が95パーセント以上である事業者および当該課税期間につき簡易課税制度が適用される事業者については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6118.htm

インボイス制度の横槍

最後に、インボイス制度の影響について説明します。

インボイス制度は、リバースチャージとは直接関係ありませんが、
消費者向けの電気通信利用役務の場合に影響を及ぼします。

具体的には、これまで「登録国外事業者」という制度だったものが「インボイス制度」に置き換わるという変更があります。
以下の図示ですとわかりやすいかもしれません。

    登録国外事業者(今後はインボイス制度に移行)

該当該当しない
消費者向け提供者が納税
/仕入控除できる
提供者が納税
/仕入控除できない
法人向け経過措置対象             納税なし
経過措置対象外           受益者が納税する

参考までにこちらも国税庁の原文を貼っておきます。

登録国外事業者制度

上記のとおり、国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者は、当該役務の提供に係る仕入税額控除が制限されますが、国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務の提供については、その仕入税額控除を行うことができることとされています。

現在登録されている登録国外事業者については、こちらをご覧ください。

(注)登録国外事業者制度については、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)の導入に伴い、令和5年10月1日に廃止されます。

このため、経過措置として、令和5年9月1日において登録国外事業者であって、「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない者については、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされ、適格請求書発行事業者登録簿に登載されるとともに、書面によりその旨が通知されます。

なお、この経過措置の適用を受ける登録国外事業者が、令和5年9月30日までに「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出した場合には、令和5年10月1日に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出したものとみなされます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6118.htm

実務において気を付けること

以上が、リバースチャージについての基本的な説明です。

実際には海外からの電気通信利用役務、
つまり「海外のクラウドを基盤としたSaaS」を利用することが日常的になっています。
この複雑なリバースチャージの制度により、以下のような混乱が生じる可能性があります。

  1. 提供側企業が海外のサービス提供者自体で日本法人を持つ会社が、リバースチャージ対象かどうかを見誤る
  2. 受益側企業が自身が経過措置の対象かを見誤る
  3. インボイス制度の適格要件漏れで仕入控除ができなくなる

これらの問題を避けるためには、まず正確な理解を持ち、必要なら税理士法人に相談することが重要です。
ただし、税理士法人も海外に強いところを選ぶことをお勧めします。
なぜなら、ドメスティックなところは間違った理解をしていることがあるからです。

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